no.1/旅が始まるまで、ディランの町へ。
2011年 05月 30日
ミネソタ州ヒビングは五大湖の北、カナダ国境に近い錆びれた田舎町だ。
メインストリートを挟んで、どこといって特徴のない2階建ての商店街が200メートル程続く。
試しに横町にちょいっと入ってみても、くすんだ平屋の住宅地があるだけで、
それも、すぐに空き地に突き当たる。場所によっては影絵の様な木のない山が見える。
鉄鉱石を掘った後の残土の山なんだろう。
僕は西海岸のシアトルから、10日程かけてここまで来た。
ボブディランのホームタウンだと知らなかったら、暗くなる前に次の町へ向かっていたと思う。
北のせいか陽が傾くのが早く、沈むと突然寒くなる。急ぎ足で町を歩いた。
BOWLINGの文字がディスプレイされた建物があったので、入ってみる事にした。
もしかしたらクローズかなと思うくらい飾り気のないドアを押すと、
暗い照明の下に1ダースのレーンがあるだけで、ボーリング場らしい華やかさはどこにもない。
レーンの先に列んだピンが、不思議な置物に見えた。
カウンターの向こうに、中年の男がいたから営業中なんだろうけど、客は一人もいなかった。
ディランが通っていたヒビングハイスクール。
ディランがニューヨークに到着したのは、2005年に出版された自伝によれば、
冬の最中で寒気が厳しく、街の機能が何もかも雪で麻痺していたと書いてある。
そしてこう続く。
「私は硬い雪の地面を歩き出した。噛み付く様な風が顔に吹き付ける。
とうとうここにやって来た。私は冷えきった北国から、暗く凍った森と
凍てついた道が、ごく当たり前の地球の片隅からやってきた。」
次の日の朝、ヒビングの郊外まで南に向かう鉄道の線路を捜しに出かけた。
6時を過ぎてもまだ暗く、モーテルを出ようとして、車のキーを差し込むと、
寒さでフロントウインドーが凍っているのに気がついた。
ヒビング郊外。
セカンドアルバムに収録された「北国の少女」が、
ディランの唄で唯一、故郷とその寒さを想像させる。
イントロのギターの優しい音は、まるで降り始めの雪のようだ。
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by kagedesu
| 2011-05-30 20:49
| DRIVE PHOTOS, USA